Bバラを商う街、プロヴィディフ

社会主義時代にバラ産業を国策としてきたブルガリアには、いくつかのバラの街があります。バラの谷の西端に位置し、古くから商人たちの交流都市として栄えてきたプロヴィディフもそのひとつ。街中に数多く残る中世の建築様式を取り入れた豪商の館、道端や生垣に咲く色とりどりのバラの花、人々の日常の暮らしの中にバラとの深い営みを感じることができます。壁面のバラのモチーフが斬新な豪商の館は、現在、博物館になっています。ピンクの可憐なバラのように生きる豊かな精神は、街を闊歩する肌の美しい女性たちの笑顔にも受け継がれているようです。

秘話 B秘密の商談“ロゼットカ”
【ここでの話は内密に】

ある豪商の館の天井に設えられた“ロゼットカ”と呼ばれるバラをあしらった装飾。天井にバラ? 実は、愛の象徴として語られることが多いバラには「秘密を見守る」という言い伝えがあります。教会の懺悔室のドアに、市議会の扉によくバラが置かれていることからもその真意が伺えます。商館に飾られたバラのロゼットカも「ここでの話は内密に」という商人たちの紳士協定をカタチにしたものでした。商談はバラの下で、バラの街に息づく文化の奥深さを知る習慣です。商談の一部始終を見つめ続けてきたロゼットカは、いまでも沈黙を守っています。

   
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